「卵管造影検査、本当に必要?」受けない方がいいケースと賢い選択
「不妊治療を始めたばかりだけど、卵管造影検査って痛いって聞くし、正直受けたくない…」
そう思っている方、意外と多いのではないでしょうか。卵管造影検査は、不妊の原因を探る上でとても重要な検査の一つですが、痛みや身体への負担、そして費用を考えると、「本当に自分に必要なのかな?」と疑問に感じるのは当然のことです。
この記事では、卵管造影検査が必ずしも必要ではないケースや、受けないという選択肢について、具体的な情報と賢い判断のヒントを、やさしい言葉でご紹介します。
卵管造影検査って、そもそもどんな検査?
卵管造影検査は、子宮の入り口から造影剤を注入し、その造影剤が子宮から卵管を通り、お腹の中(腹腔内)に広がる様子をレントゲンで撮影することで、卵管の通り道(通過性)や子宮の形に異常がないかを調べる検査です。
卵管は、卵子と精子が出会い、受精卵が子宮へ運ばれる大切な通路。もし卵管が詰まっていたり、狭くなっていたりすると、妊娠が難しくなるため、不妊治療では重要な検査とされています。
卵管造影検査を「しない方がいい」と考えられるケース
卵管造影検査は非常に有用な検査ですが、すべての人に必須というわけではありません。以下のような状況では、医師と相談の上、検査をしないという選択肢も検討できます。
1. クラミジア感染症がある、または感染の疑いがある場合
- 理由: クラミジアなどの性感染症に感染している状態で卵管造影検査を行うと、造影剤とともに菌が骨盤内に広がり、炎症(骨盤腹膜炎など)を引き起こすリスクがあります。
- 対策: 検査前に必ずクラミジア検査を行い、陽性の場合は、まず抗生剤で治療を優先します。感染が確認できれば、検査を延期したり、別の検査方法を検討したりします。
2. 造影剤(ヨード)アレルギーがある場合
- 理由: 卵管造影検査で使用する造影剤にはヨード(ヨウ素)が含まれています。ヨードにアレルギーがある方は、かゆみ、発疹、吐き気などの軽い副作用から、ごく稀にアナフィラキシーショックのような重篤なアレルギー反応を起こす可能性があります。
- 対策: 過去に造影剤でアレルギー反応を起こした経験がある方は、必ず事前に医師に伝えましょう。この場合、卵管通水検査など、造影剤を使用しない代替検査を検討することになります。
3. 甲状腺疾患がある場合
- 理由: 造影剤に含まれるヨードは、甲状腺ホルモンの材料でもあります。甲状腺機能亢進症など、甲状腺に持病がある方は、造影剤の影響で甲状腺機能に一時的な変化が生じる可能性があるため、注意が必要です。
- 対策: 甲状腺疾患がある場合は、事前に主治医に相談し、検査の許可を得るか、検査の必要性について慎重に検討する必要があります。
4. 妊娠している可能性がある場合
- 理由: 卵管造影検査はX線(レントゲン)を使用します。妊娠初期にX線を浴びると、胎児への影響が懸念されるため、妊娠の可能性がある時期には絶対に行いません。
- 対策: 検査は生理が終わってから排卵までの、妊娠の可能性が低い時期に行われます。検査前は必ず避妊し、少しでも妊娠の可能性がある場合は、検査を中止または延期します。
5. すでに体外受精(IVF)を予定している場合
- 理由: 体外受精では、採卵した卵子と精子を体外で受精させ、できた受精卵を直接子宮に戻すため、卵管の通過性は必ずしも必須ではありません。ただし、卵管に水が溜まる「卵管水腫」がある場合は、着床率が低下する可能性があるため、卵管水腫の有無を確認する目的で検査を推奨されることもあります。
- 対策: 体外受精に進むことが決まっていて、卵管水腫が疑われない場合は、卵管造影検査を省略することも可能です。医師とよく相談し、自身の状況に合わせた治療計画を立てましょう。
6. 検査による痛みが非常に不安な場合
- 理由: 卵管造影検査は、造影剤の注入時や卵管の狭窄・閉塞がある場合に、生理痛のような痛みを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、痛みに極度の不安を感じる方もいるでしょう。
- 対策: 不安が強い場合は、事前に医師に相談し、鎮痛剤の使用や、痛みに配慮した検査方法(例えば、水溶性造影剤の選択など)について確認しましょう。また、代替検査として「超音波下卵管通水検査(ソノヒステログラフィー)」を検討できる場合もあります。これは、生理食塩水を超音波で確認しながら注入する検査で、放射線被曝もなく、痛みが少ないとされていますが、診断精度は卵管造影検査に劣る場合もあります。
卵管造影検査を受けないという選択肢を選ぶ前に
卵管造影検査を受けないという選択をする前に、以下の点も考慮しておきましょう。
- 卵管の異常を見逃す可能性: 卵管に問題がある場合、卵管造影検査でしか分からない情報もあります。検査をしないことで、不妊の原因を見落とし、適切な治療にたどり着くまでに時間がかかる可能性もゼロではありません。
- 治療方針への影響: 卵管の状態は、今後の治療方針(タイミング法、人工授精、体外受精など)を決定する上で重要な情報です。検査をしない場合、医師が最適な治療法を提案しにくくなることがあります。
- 通水効果の有無: 卵管造影検査は、診断だけでなく、軽度の卵管の詰まりを改善する「通水効果」も期待できると言われています。検査をしない場合、この治療的な恩恵は受けられません。
結局、どうすればいいの?あなたに合った選択をするために
卵管造影検査を受けるか否かは、あなたの状況や考え方、そして医師との信頼関係がとても重要になります。
- 不安や疑問はすべて医師に伝える: 痛みが不安、費用が心配、アレルギーがあるかもしれない…どんな些細なことでも、遠慮なく医師に伝えましょう。
- 検査のメリット・デメリットを理解する: 検査によって得られる情報と、それによるリスクをしっかり把握することが大切です。
- 代替検査の可能性を探る: もし卵管造影検査が難しい場合でも、卵管の通過性を調べる他の方法がないか、医師に相談してみましょう。
- 信頼できる医師を見つける: あなたの疑問に真摯に耳を傾け、納得のいく説明をしてくれる医師を選ぶことが、後悔のない選択につながります。
卵管造影検査は、不妊治療の「登竜門」のように感じられるかもしれませんが、決して絶対ではありません。あなた自身の体のこと、将来のこと、そして治療への希望を、医師としっかり共有し、納得のいく「あなたにとってベストな選択」を見つけてくださいね。